テキスタイルは一年前からスタートそれだけ先を見る目が大切
素材作りのエキスパートであるテキスタイルデザイナーは専門化された高度な知識と経験が必要とされ、素材の時代といわれる現在、アパレル業界内でとても重要な役割を果たしています。
有名なテキスタイルデザイナーとしては、三宅一生さんやコムデギャルソンの素材作りを担当し、一躍世界的に有名になった新井淳一さんなどがいます。
80歳を超える高齢ですが、彼の作品には見るものを圧倒する迫力があります。
この記事ではテキスタイルデザイナーへの転職を検討している方向けに、テキスタイルデザイナの仕事内容、現役テキスタイルデザイナーの仕事のこだわり、テキスタイルデザイナーへの転職実例をみていきます。
テキスタイルデザイナーの仕事内容
テキスタイルデサイナーには所属する会社の種類で大きく二つに分類されます。
ひとつは素材メーカーや生地問屋に所属するケース、もうひとつはアパレルメーカーの素材担当として所属するケースです。
素材や生地に関する専門的な知識と経験を深めたい場合は素材メーカーや生地問屋に所属した方がよいでしょう。
最終的な洋服のデザインをベースに必要な素材のポイントを考えたり、素材メーカーと一緒に新しい素材を検討・開発する仕事を希望する場合はアパレルメーカーに所属する方がよいでしょう。
テキスタイルデザイナーの実際の求人はこのようになっています。
この求人は正確には「雑貨デザイナー」ということで、扱うアイテムが幅広いという特徴があります。
雑貨メーカーの多くは雑貨のベースとなる生地を世界中から調達しており、雑貨のデザインによっては商社や現地の生地問屋や工場と協力して生地から作っています。
一方、テキスタイルデザイナーの求人情報はほとんど出ていないのが現実です。
グーグルやヤフーで「テキスタイルデザイナー 求人」と検索しても、一般的なファッションデザイナーの求人だったり、バッグなど小物のデザイナーだったりしますよね。
テキスタイルデザイナーの仕事に興味があって、真剣に転職活動をしている人、できるだけ良い条件の求人を探している人は、こちらの記事を参考にされてみてください。未経験でも大丈夫です。
テキスタイルデザイナーの求人動向や各企業の選考の傾向や対策などもかなり的確にアドバイスしてもらえる「アパレル専門の転職エージェント」もご紹介しています。
→ ファッションデザイナーの求人情報の探し方
テキスタイルデザイナーの仕事
テキスタイルデサイナーの仕事としては次のようなものがあります。
素材企画
索材における次のトレンドを見極める仕事です。
ファッション市場をタ-ゲット別に分析したり、TPO別にマップを作ることもあります。
ファッションのトレンドを念頭におきつつ今後求められる素材、開発すべき素材を決めていきます。
具体的には色、柄、糸番手、組職、原料、仕上げ、風合い、生地幅などを検討していきます。
生地は産地による風合いや色味が異なるため産地も重要な検討ポイントです。
見本発注
素材の概要が決まったら見本発注をしてサンプルを作ってもらいます。
サンプルがあがったら必要な修正を加えて、企画どおりの素材ができるようにつめていきます。
工場との折衝が多く出張も多い仕事といえます。
プレゼンテーション
作った素材をアバレルメーカーのデザイナーに取り上げてもらえるよう効果的な展示や説明を行います。
テキスタイルデザイナーにかかわらずデザイン案の魅力をプレゼンテーションするスキルはデザイナーにとってとても重要なスキルとなります。
共同開発
特定デザイナーのための特定素材をデザイナーと一緒に作っていきます。テザイナーのもつイマジネーションを素材デザイナーの技術と感性で、よりすばらしいものに仕上げていくことがポイントになります。
いずれにしても工場の流れ生産段階の技術を理解してこくとで、「どこの機械に、この糸をかけて、こんな素材を作ろに、この糸をかけて、こんな素材を作ろう」という考えができるようになります。
テザイナーブランドがキャラクター化してきている現在、素材のオリジナリティを出すことによって差別化をはかるというケースが増えてきています。テキスタイルデザイナーの役割がますます大切になってきているといえます。
テキスタイルデザイナーになるには
テキスタイルデザイナーになるにはまず生地に関する基本的な知識を身につける必要があります。
テキスタイル専門の学校か大学の専門コースでテキスタイルを学び、最低限プリントの下絵描きができるようにならなければなりません。
また、糸、原料、綿といった素材の勉強と、織機や編機の勉強も必要になります。
企業に入ってからも感性だけでは一人前になれず、産地や機械のことも理解しておく必要があります。
その反面一度、生地関連の知識や技術を習得すると、いくつになっても仕事を続けられるというメリットがあります。
また、テキスタイルデザイナーを中途で目指す人には、独学で生地のもとを勉強しながら少しづつ知識や経験を広げていくというステップもあります。
学校に行く時間がないからといってテキスタイルデザイナーをあきらめる必要はありません。
いずれにしてもテキスタイルデザイナーの仕事は、ある程度の商品知識や業界知識を体得する必要があるため、コッコッと努力のいる下積み時代を我慢できる真面目な性格と、ファッションについて素材からデザインまでの領域での幅広いセンスが求められる仕事です。
とある現役テキスタイルデザイナーの仕事とこだわり
続いて、現役テキスタイルデザイナーにきいた「仕事」に対するこだわりをご紹介します。
仕事の内容は?
プリント図案の作成、配色の指示、無地素材の企画、ビーカ-ー依頼、ビーカー確認、仕上がった索材の確認、再依頼など1日があっという間に過きていきます。
携わっているプランドは年に2回の東京コレクションに参加。
ブランドの顔でもある1シーズンに20柄以上発表するオリジナルプリントの作成に加え、無地の生地作りなど計60〜70索材の企画を検討し素材メーカーへの指示を行っています。
仕事に取り組む上でのこだわりは?
妥協した時点で物づくりの成長は止まります。お客さまが洋服を手にしたときに幸せな気持ちになり、結果としてブランドが成長していけるように、納期を守りつつ、妥協をせずに仕事をすることを意識しています。
仕事のやりがいは?
企業に属しているのでまずは洋服が売れることが一番のやりがいです。お客さまに支持された結果実際に商品が売れたときにやりがいを感じます。
それからコレクション会場で目をきらきらさせて舞台をこ覧になるお客さまを見たときも。
これからも新鮮な気持ちで、素敵な生地作りに取り組んでいきたいです。「継統はカなり」ですから。
テキスタイルデザイナーを目指す後輩へ一言
一番好きなことを仕事にするのはなかなか難しいことかもしれませんが、あきらめずに努力すれば道はひらけると思いますし、それが長読きの秘訣だと感じています。またテキスタイルデザイナーとしての知職は日々積み重なっていくものなので、目分の引き出しにどんどんストックしていくことを心がけることが大切だと思います。
テキスタイルデザイナーの転職の実例
最後にテキスタイルデザイナーの転職の実例をご紹介します。
「やや特殊な事例」のように感じるかもしれませんが、テキスタイルデザイナーという仕事の特殊性・専門性があるからこそ、最終的に独立するレベルにまで知識や経験、ネットワークが高まるということです。
会社の希望退職に応じようと思います。会社の業績もよくありませんし、今後閑職に配置転換されるのも私としては嫌です。デサイナーとして生きていくにはどうしたらいいのでしようか?(Tさん 49歳 テキスタイルデザイナー)
会社の希望退職に応じ、転職か独立か
テキスタイルデサイナーのTさんは、これまで毎年シーズンの初めに新しい素材開発に挑戦してきました。Tさんは大学の家政科で主にテキスタイルを学び、卒業と同時にテキスタイルメーカーに就職しました。入社から27年間、新素材の研究を重ねてきました。
30歳の時「日々の仕事になんとなくもの足りない感じがして・・・」素材の研究職からテキスタイルデザイナーに転職をしました。
以来約17年間テキスタイルデザイナーとして仕事を続けてきましたが、市況の低迷は会社のテキスタイル部門を直撃しました。
素材開発というのはアパレルの研究部門でも非常にコストのかかる組織で、不景気で商品が売れなくなると自社開発を絞り込むものです。
景気悪化の営業でTさんの会社もテキスタイル部門をアウトソーシング(外注)することにしました。
それと同時に希望退職者を募りリストラを行うことになりました。
Tさんは希望退職に応じ転職するか独立するかで悩み、転職エージェントに登録したのです。
プロデューサーとしての独立を決意
エージェント:Tさんの資料を拝見すると、素材の知識はもちろんですが、デザインカにも優れていることがよくわかります。ですが年齢(49歳)を考えるとテキスタイルデザイナーとして再就職するのはとても難しい感じがしました。
Tさん:そうですよね。もう50歳ですから・・。でも、自分が持つあらゆる人脈を使って今の仕事が続けていけたらと思っています。
エージェント:Tさんほどの力があれば、独立するという道もあります。
Tさん:独立も考えていました。でも、果たして自分にできるかどうか不安があります。
エージェント:今企業がアウトソーシングするケースは確実に増えているので、Tさんほどのべテランになると、独立しても企業からの仕事を受注することは十分可能だと思います。ただし、景気はあまりよくないのでやり方を間違えると失敗するリスクもあります。
Tさん:はい。
エージェント:Tさんは実績があるので、テキスタイルのプロデューサー的な仕事がよいのではないかと思っています。つまり、企画、製作などをあらゆる人脈を使ってプロデュースしていく仕事です。
Tさん:確かにこの年齢まで仕事をしていればたくさんの知り合いはいますね。 テキスタイルデザイナーもいますし、ファッションデザイナーもいます。それに紡績関連や機屋さんにもパイプはあります。
エージェント:たとえば、Tさんの友人で今はフリーの人とか子育てが終わって仕事をしたいと考えている人もいるのではないですか。その人たちを活用してけば、さまざまな仕事ができる可能性がありますね。
では独立の方向で考えていきましよう。
人脈を活用して会社設立へ
ミドルエイジの転職では「独立」がひとつの選択肢になります。長い間ファッション業界で培ってきた人脈というのは何ものにも代え難い財産です。それを利用すれば、独立はさほど難しいことではありません。
それから私とTさんは独立に向けた相談を重ねました。まず退職するまでにプライベートの時間を利用して企画書を作成することにしました。
これはTさんの得意分野です。商品ターゲットを絞り、それに合わせてどのようなテキタイルを使用するのかを考えていきます。
私がアドバイスしたのがデサイナーを起用することでした。デザイン画を作成して、より具体的に提案していくためです。Tさんは会社の同僚で、同様に希望退職するデザイナーに声をかけたところ、ふたりで会社を設立しようというところまで話が進んできました。
退職後、Tさんと同僚のデザイナーは2人で会社を設立して企画会社を興しました。
焙ってきた人脈を生かす。ミドルエイジの仕事探しはネトワークが大きな武器になるんですね。
※テキスタイルデザイナーとして転職してみたいという人は、一度、転職エージェントに相談されるとよいと思います。あなたのこれまでのキャリアや希望に応じて、転職の仕方のアドバイスをしてくれたり、非公開の求人からあなたになった会社をおすすめしてくれたりします。特にテキスタイルデザイナーは求人数自体が多くないので情報が集まる転職エージェントの相談されることをおすすめします。最近ではファッション業界専門のエージェントもあるのでご興味があれば一度ご相談ください。
興味がある方はコチラの記事をお読みください。
→ ファッションデザイナーとしての転職のコツ